放射線治療センター(トモセラピー)

 はじめに

 天神会では新古賀病院におけるリニアック、マイクロセレクトロン、ガンマナイフを用いた10年以上にわたる放射線治療の経験後、2008年9月より古賀病院21に「放射線治療センター」を新設し、トモセラピーを新規導入、リニアックを新鋭機種に更新、マイクロセレクトロンを移設して新たな総合的な高精度放射線治療を実施しています。トモセラピーによる強度変調放射線治療と定位放射線治療を開始後2年が経過しました。

 強度変調放射線治療(IMRT)とは

 現在最も注目されている体外からの放射線治療法です。がんの形態は複雑で周囲には正常な臓器や組織があります。従来の放射線治療では限られた方向からほぼ同量の放射線を照射するため、正常組織への被爆は避けられず、副作用や障害を懸念するあまりがんに十分な線量を照射することが困難な場合が多々ありました。IMRTは治療器を360度回転させかつ各方向からの線量に強弱をつけることにより、がんの形態に合わせて集中的に照射することが可能です。周囲の正常組織への線量を極力減少させかつ、がんにより高い線量を照射することでがんの制御率を高め、副作用を最小限に軽減できる治療法です。

 トモセラピーとは

 IMRTはすでに高精度リニアックを用い全国の多施設で行なわれています。但し従来の機器では機能精度やコンピュータ精度の問題で治療計画に多大な労力と時間を要し、十分に活用されているとは言いがたいのが現状です。トモセラピーはCTと一体となったIMRTの専用機器であり、超高精度のコンピュータを用いて治療計画を行なうため、迅速かつ精度の高い治療が可能です。2003年に米国で開発され現在全世界で250台以上が稼動しています。日本では当院が12施設目の稼動で、約1年が経過し160例以上の治療を行いがん患者様の放射線治療に貢献しています。トモセラピーには以下のような特徴があります。
 

超高精度コンピュータによる治療計画を行ない、多方向から異なる線量を照射できるため、がんの形態に近い照射野の設定が可能。その結果がんの制御率を向上させ、副作用を極力軽減することが可能
 

治療器とCTが一体となっており、治療ごとにCTを用いてがんの位置を確認するため、照射部位にずれがなく正確にがんへの照射が可能
 

広い範囲で治療ができるため、比較的大きながんを治療でき、複数のがんを一度に治療することも可能。原理的には全身の治療も可能
 

小さながんに高線量を集中させ、短期間に治癒をめざすピンポイント照射「定位放射線治療」も可能
 

1日1回、15~20分前後の治療で副作用も少ないため、外来通院で治療でき、通常の日常生活を送ることが可能 など

 トモセラピーの疾患別適応
 強度変調放射線治療の保険適用(20104月より)
 限局性の固形悪性腫瘍(すべてのがんが対象)

 定位放射線治療の保険適用(1回ないし数回の治療
 1.

頭頚部腫瘍 

 2.

脳動静脈奇形(頭頚部および体幹部)

 3.

直径5cm以内の転移病巣のない原発性肺癌または原発性肝癌

 4.

3個以内で他病巣のない転移性肺癌、または転移性肝癌


 従来のリニアックによる放射線治療の保険適用

頭頚部癌、肺癌、乳癌、食道癌、肝癌、胆管癌、膵癌、泌尿器癌、直腸癌、子宮癌、悪性リンパ腫、骨軟部組織腫瘍、骨転移、脳転移などほぼすべての悪性腫瘍

 トモセラピーの治療方針別適用
 1.

早期癌に対して治癒を目的とした治療

 2.

従来のリニアック治療などでは十分な線量を照射できない場合でも、病巣に絞って追加して照射することでがんを制御する確率を高める治療

 3.

再発・転移、進行癌に対してもがんを極力制御し、進行の抑制や症状の緩和をはかり、限局した病巣であれば予後の延長や治癒もめざす治療

 4.

疼痛や麻痺などの症状を短期間かつ少ない副作用で行なう治療 など

 トモセラピーの治療費
保険適用の強度変調放射線治療の場合
  放射線治療管理料 5万円
  1回治療費 3万3千円 (37回の場合122万円)
  施設加算 (施設により異なり37回の場合約6万円)
 

総額(諸検査を含め)約140万円

 
保険適用の定位放射線治療の場合数回~10数回)
  治療費 63万円
従来のリニアック治療に準じた保険適用の場合
  放射線治療管理料 4
  1回治療費 2万1円 (37回の場合約78万円)
  施設加算(施設により異なり37回の場合約6万円
以上の場合は保険適用ですので総額に対する各種健康保険の負担額となります。
 
自由診療の場合

 強度変調放射線治療や定位放射線治療は上記の保険適用疾患以外でも行なうことは可能です。但しトモセラピーの場合通常のリニアック治療とは異なり一人の患者様に要する時間がかかり、約20分といえども一日に行なえる症例は20名程度です。高精度の機器でかつ高額なため各施設ともに治癒可能な早期癌を優先しているのが現状です。それでもトモセラピーによる治療を希望される患者様も多いようで、独自の料金設定で自費(150~200万円)による自由診療を行なっている施設もあります。

 当院におけるトモセラピーの運営方針
  • 治療経験が豊富で治療効果の高い「前立腺がん」の治療を優先しています。

  • 強度変調放射線治療、定位放射線治療ともに保険適用の症例の治療が原則です。

  • 保険適用でない症例でも病巣が限られた範囲にあり転移が多発していない場合は従来のリニアック治療に準じた治療費で治療します

  • 自由診療は今のところ予定していません。
 当院での放射線治療の特色

 新古賀病院での11年と当院での1年、計12年以上にわたり放射線治療を行なってきました。スタッフは放射線腫瘍学会認定医、治療技師は放射線治療専門放射線技師、看護師はオンコロジーナース(がん治療専門の看護師)であり、長年がん患者様の治療に従事してきました。リニアックを用いた体外照射、マイクロセレクトロンを用いた密封小線源治療(食道がん、胆管がん、気管・気管支がん、子宮頸がんなど)の経験が豊富です。また脳神経外科医の担当するガンマナイフ治療も3800例を越え、多彩な放射線治療を実践してきました。天神会は総合病院でなく、泌尿器科、耳鼻科、眼科、小児科などはありません。しかし消化器がん、肺がん、乳がん、血液悪性疾患、脳腫瘍などにおいては各科の医師との連携のもと手術、化学療法、放射線治療による集学的がん治療を行なってきました。また3次元CT、MRやPET-CTといった精密な診断機器も充実しており、より正確な診断と治療計画が可能です。4機種の異なった機器(ガンマナイフは新古賀病院)を駆使し、更なる効果的ながん治療を行なっていく所存です。

 トモセラピー治療をご希望の患者さんへ

放射線治療センターの連絡先  

  • 主治医の先生または患者様ご本人よりご連絡下さい。後日一度外来受診していただき、治療が可能か否かを検討させていただきます。

  • 原則として主治医の先生の紹介状が必要です。特に前立腺がんの場合は組織検査所見、グリソンスコア値、PSA値の情報は不可欠です。CT、MRやPET-CTなどの画像診断があれば持参下さい。

  • 治療が可能であれば当日にでも治療の準備のためのCT検査を行ないます。もし必要な画像診断が不足している場合は当院でCT、MRやPET-CTなどの検査を行なわせていただきます。但しPET-CTは疾患によっては保険適応外の自費検査となります。(トモセラピーによる治療が困難な場合にはそれに代わる治療のご相談に応じます)。

  • 治療計画と照射野検証のため、治療の開始は後日(3~5日後)となります。

  • 治療日は原則月曜から金曜の連続週5回です。その間に祝日がある場合には土曜にも行ないます。一回の治療は約20分で痛みやその他の自覚症状はまったくありません

  • 治療回数は前立腺がんの場合、悪性度、進行度により37回ないし38回を予定し、7~8週間が必要です。定位治療の場合は10回前後で2~3週間です
  • 前立腺がんの治療は外来通院で行ないます。通院が不可能な遠方の方は当院で連携している宿泊施設をご紹介します

  • 治療後の経過観察は原則として紹介の主治医の先生に行なっていただきます。詳細な治療の内容や経過、副作用などの情報を提供させていただき、治療後も可能な限り連携をとります。前立腺がんの場合は当院でも定期的に経過観察を行います
前立腺癌 前立腺癌 前立腺癌
前立腺癌画像
 今後の展開について

 古賀病院21に「放射線治療センター」を開設し2年以上が経過しました。強度変調放射線治療は現在最も注目されている放射線治療法であり、副作用の少ない、治療効果の高い“より優しい、より確実”な治療法です。今後IT革新が更に進み、機器が安価となれば近い将来確実に標準的放射線治療となるでしょう。当院でも160例以上を経験し、治療の効果は疾患により異なりますが、安全でかつ副作用の極めて少ない治療であると実感しています。
 欧米先進国では手術や化学療法との併用ないし単独を合わせ、がん患者の60%前後に放射線治療が行なわれています。日本でも生活習慣の欧米化により肺や前立腺、乳腺、大腸などのがんが増加しているにもかかわらず、放射線治療は約25%程度しか行なわれていません。しかし除々に放射線治療への理解も高まりつつあり、2007年4月に施行された「がん対策基本法」では放射線治療の重要性が認知されました。その結果2008年4月より新たに強度変調放射線治療に特別の保険診療が新設されました。当院では従来から“暗く、つらい放射線治療”のイメージを払拭する治療を行なってきましたが、更に最先端の“より優しい、より確実”な放射線治療を行なう所存です。
 新鋭リニアック機器(オンコア)での治療も併用し、マイクロセレクトロン(密封小線源治療器)と併せ総合的な「放射線治療センター」となっています。トモセラピー以外にも多彩な放射線治療が可能で、ガンマナイフを含め全国でも比類ない放射線治療を行なうことができる施設と自負しています。
 天神会では従来から各種のがん治療の専門医により高度のがん治療を行なってきました。今後も更に発展的にがん治療を推進します。古賀病院21では従来から消化器がん、肺がん、血液悪性疾患の専門医によるがん治療を行なってきましたが、今後も新古賀病院と連携し従来どおりに乳がん、脳腫瘍の治療を行ない、地域連携病院との連携により泌尿器がんなどの治療も行なっていきます。古賀病院21は手術、化学療法、放射線治療による集学的がん治療が実践できる「がん治療センター」をめざし、がんと診断された早期からの緩和医療も可能な病院となることが理想と考えています。

 前立腺がんのトモセラピーによる強度変調放射線治療

 前立腺がんは男性特有のがんで、生活習慣の欧米化などで最近日本でも急速に増加しています。予測では10年後には肺がんに次いで2番目に多く発症すると言われています。特にPSA検診の普及で早期発見が増えています。治療法は早期では手術か放射線治療で、高精度の放射線治療は手術成績と同等です。


 適  応
 1.

初発症例で転移病巣のない症例(転移のある症例は対象となりません) 

 

進行度や細胞の悪性度によりホルモン療法を併用することがあります。一般的に放射線治療終了後も6ヵ月から2年程度併用することとなります。

 2.

ホルモン療法先行例

 

ホルモン療法は効果的な治療法ですが、治癒をめざす治療ではありませんのでいずれ効果がなくなります。ホルモン療法でPSAが低値で安定していても放射線治療を併用することで根治が期待でき、いずれホルモン療法を終了できます。PSAが上昇した場合は再発と診断されますが、その際に再検査で転移がなければ放射線治療で根治の可能性があります。


 副 作 用

 治療中盤から後半になると半数以上の場合で尿の回数が増え、排尿がしづらくなります。また半数以下ですが、排便時の痛みや違和感がでてきます。いずれも治療を中断するほどではありません。当院では過去1例も副作用で治療を中断したことはありません。治療終了後1ヵ月ほどは症状が続きますが、2~3ヵ月で消失します。膀胱と直腸以外の症状はまずありません。


 実  績

前立腺がん:255  ('08/9~'10/12) 

初発(178):初めて前立腺がんと診断された症例

    ホルモン療法併用 :65
    放射線治療単独 :113
  ホルモン療法先行(47):
        以前から前立腺がんと診断されホルモン療法のみ行っていた症例
    非再発  :17
    PSA再発  :30
  その他(30):リニアック治療併用等
 トモセラピーによる放射線治療を実施している施設(開始順)
 北斗病院(北海道)  木沢記念病院(岐阜)  名古屋第二赤十字病院(愛知)
 愛知がんセンター(愛知)  日高病院(群馬)  宇治武田病院(京都)
 江戸川病院(東京)  済生会熊本病院(熊本)  相澤病院(長野)
 十和田中央病院(青森)  クリニックC4(千葉)  当院
 福井県済生会病院(福井)  北福島医療センター(福島)  一宮市立市民病院(愛知)
 湘南鎌倉総合病院(神奈川)  鈴鹿中央総合病院(三重)  
 
 放射線治療センターの連絡先
お問い合わせ・お申し込み
 
直通電話番号:
0942-38-2731
(受付時間 月~金 9:00~16:00)
代表電話番号:
0942-38-3333
 
担当医師:
大 曲 淳 一  

〒839-0801 福岡県久留米市宮ノ陣3-3-8

FAX : 0942-38-2732


 <参考>放射線治療法の種類
リニアックによる外部照射:

最も一般的な放射線治療法、X線、電子線を用いて体外より行なう。全国約700施設で施行、数回から数十回連続して行なう。高精度機器であればIMRTやSRS、SRTも可能。特殊治療として術中照射(IOR:全身麻酔下で手術時に直接病巣へ1回で照射)も行なう。

 

トモセラピー

強度変調放射線治療:

病巣の形態に併せた精度の高い、副作用の少ない治療。高精度リニアック、トモセラピーなどを用いる

定位放射線治療:

小さな病巣に高線量のX線やガンマ線をピンポイントに集中させ、あたかも手術で切除するような効果が得られる方法。1回(SRS)ないし数回(SRT)で行なう。高精度リニアック、サイバーナイフ、ガンマナイフ、ノバリス、トモセラピーなどを用いる

粒子線治療:

陽子線、炭素線を用い病巣の形態に併せた治療が可能。がんの制御率は高く、とくに炭素線ではX線より高い抗腫瘍効果が得られる。現在日本では約10施設が稼動、今後各地で開設を計画している。設備費に六、七十億~百五十億円かかり、治療は保険適応外であり自費で約300万円が必要

密封小線源治療:

イリジウム、セシウム、コバルト、金などの放射能を外部へ漏れることなく封入した小さなカプセルや針などを用いる。そこから発生する主にガンマ線により、がん病巣の近傍や内部から治療する。直接がん病巣に線源を埋め込んだり、病巣に差し込んだチューブを用いる組織内照射(口腔、前立腺がんなど)と、管腔に挿入したチューブを用いる腔内照射(子宮、食道、胆管、気管・気管支がんなど)がある。高濃度放射能を用い短時間に遠隔操作で行なう治療はRALSと呼ばれる

放射線同位元素内用療法:

甲状腺がんや甲状腺機能亢進症のヨード内服療法、骨転移の除痛目的のストロンチウム内服療法など。内服した放射能が生理的に組織や病巣に取り込まれ、そこから発生するベータ線により治療する。放射線が外部に漏れない特殊な病床での管理が必要な場合があり、施設は限られている