社会医療法人天神会 2024年度 年報
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診療技術部看護部各委員会報告業績編集後記教育講演会・研修会・研究会天神会医療研究会抄録であり、予防医学にあたる。 当院は住宅型有料老人ホーム内に在る為、患者の9割は高齢者であり、そのほとんどが後期高齢者である。 患者の訴える症状は多岐に渡るが、主に不眠、頭痛、肩こり、腰痛、膝痛、関節痛、浮腫、夜間頻尿、難聴、めまい、冷え等である。 疾病としては、変形性膝関節症、脊柱菅狭窄症、関節リウマチ、ヘバーデン結節、高血圧症、糖尿病等である。 問診にはかなり時間を要するが、できる限りの自覚症状の聞き取り、睡眠の状態、排尿、排泄状態、ストレスや悩み等、聞き取れることは会話の中からも拾い上げていき、一人ひとりに合わせ施術内容を毎回組み立て、鍼・灸・あん摩を行っている。 どの患者も週に1回から2回の頻度で定期的に施術を受けて頂き、他覚的に関節可動域の改善、筋緊張の緩和、浮腫の改善など確認でき、自覚症状として疼痛の緩和、入眠しやすくなった、夜間頻尿の回数軽減、耳鳴りの回数低下、歩きやすい、冷えの改善等報告を受けている。 しかし、先に記述している症状等は「老い」とは切っても切れないものである。 医療が発展し、超高齢社会となった今、高齢者の抱える、身体的苦痛・精神心理的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアルな苦痛(生きる意味への問、死への恐怖等)をトータルペインとし、トータルペインを観察しながら、その人らしく人生の終焉をよりよく過ごし、終えるための「エンド・オブ・ライフケア」が重要だと感じている。 現在、鍼灸治療の効果に関する研究は進展しており、内科的な機能向上についても期待できることが明らかになってきている。西洋医学による診断・治療と東洋医学的アプローチを組み合わせることで、より効果的なケアの実現が可能になると信じている。 今後も、患者のQOLの維持及び向上を第一に考え、日々邁進していきたいと思っております。回復期リハビリテーション病棟高齢患者における体重管理とリハビリテーション栄養効果の検証新古賀リハビリテーション病院みらい ◎田中月都1)、柏木香菜子1)、石橋和博2)、森山陽介2)1)栄養管理課、2)リハビリテーション課【背景、目的】回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)に入院する高齢者は、食欲低下や嚥下機能の低下、疾患による代謝変動に加え、リハビリテーション(以下、リハ)による活動量増加が影響し、体重減少を起こしやすいと報告されている1)。高齢者における体重減少は、身体的・精神的な悪影響を及ぼし、リハの進展を妨げる可能性がある2)。そのため、体重減少を早期に発見し、適切な栄養管理を提供することが身体機能の回復と生活の質向上に繋がる可能性が期待できる。しかし回復期リハ病棟協会の報告によると、入院中に体重が減少しBMI18.5以下の低体重となる患者が増加しており、入院中の体重増加が容易でないことが示唆される3)。そこで当院回復期リハ病棟において、高齢者の体重増加を目的とし開始した、新たな取り組みとその成果について報告する。【方法】当院独自で作成したBMI別目標体重増加率をもとに、入院時に各患者の目標体重を設定し、多職種で共有を行った。食事はリハ活動量に合わせ、個々の必要量を満たす食事を提供し、定期的な体重測定結果をもとに調整を行った。介入は2024年8月から開始し、介入開始後1ヶ月の2024年9月~12月退院者を「介入群」、介入前の2024年4月~7月退院者を「介入前群」とし、体重差と四肢骨格筋指数(以下、SMI)を比較した。さらに介入群のうち体重が増加した患者において、体重差と血清Alb差、FIM利得、FIM合計の相関を検討した。【結果】介入前群と介入群での患者背景に有意差は認めなかった。介入後、体重差は介入前群と比較し有意な改善を認め(p=0.03)、体重差とSMI差においても有意差を認めた(p<0.01)。さらに体重が増加した患者では、体重差とSMI差、FIM合計との間に有意な相関を認めた。【考察】今回の取り組みの結果、体重増加が難しいとされる低体重者でも体重が増加し、効果的な栄養管理であったことが示唆された。また体重増加とSMIの相関から、筋肉量の増加が体重増加の主因であると推測される。さらに、体重差とFIM合計の相関を認めたことより、入院中の体重増加がADL向上に関連し、退院後の生活の質向上に繋がる可能性が考えられた。【参考文献】1)大森光紗,井舟正秀,石橋利浩,他:回復期リハビリテーション病棟患者の体重減少リスク因子;恵比寿医誌7:32-36,20192)Nishioka S, Wakabayashi H, Nishioka E:Nutritional Improvement Correlates with Recovery of Activities of Daily Living among Malnourished Elderly Stroke Patients in the Convalescent Stage: A Cross-Sectional Study3)Kaifukuki Rehabilitation Ward Association. Survey report on the current situation and issues of comprehensiverehabilitationwards[revisedversion]2019.— 225 —

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