社会医療法人天神会 2024年度 年報
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診療技術部看護部各委員会報告業績編集後記教育講演会・研修会・研究会天神会医療研究会抄録(p < 0.001)。【考察・結語】生成AIの導入前後で書類作成時間は削減率約58%、心理的負担や作業の難易度は軽減の効果を認めた。結果、生成AI活用による業務効率化が、スタッフの業務負担軽減に寄与したと考える。その他、生成AI作成による効果には、家屋調査内容から個々の患者に応じた問題点の抽出や介護サービス等での改善案提案など臨床的に有効な情報提供も行えた。今後、PDFファイル認識機能を用いた生成AIを活用し、臨床現場での新たな活用方法の検証と業務効率化を実践していきたい。【キーワード】生成AI、家屋調査、リハビリテーション、業務効率化、心理的負担軽減看取りケアからの回復事例が示すケアの可能性~家族と施設の共同による支援体制の構築~弥生園 施設介護係 ◎本田美智子【はじめに】高齢者の終末期においては、疾患の進行による身体機能の低下から看取りケアが選択されるケースが多い。自宅や施設での看取りケアを希望する高齢者やその家族が増えている背景には、在宅医療の普及や家族の看取りへの価値観の変化がある。更に新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、医療機関や多くの施設では面会制限が厳格に実施されてきた。こうした状況の中で、当施設は面会制限を比較的緩やかにし、家族とのコミュニケーションを重視する方針をとった。このような柔軟な対応は高齢者と家族の心理的安定にとても深く関わっている。これまでも法人内で家族の積極的な支援と施設の包括的なケアによって、回復の可能性が見られる事例があった。本症例では複数の疾患を抱える高齢者が、施設の支援と家族の関与により機能改善を示した事例を通じて、ホメオスタシスの快復力やケアの重要性を考察する。【事例】M氏 93歳男性 独居。うっ血性心不全、低アルブミン血症(アルブミン1.8)、甲状腺機能低下症、貧血など複数の疾患を有し、大腸癌術後および胆嚢摘出後の病歴を持つ。2024年1月から体調不良が続き、心不全や胆のう炎の治療を受けるがADLは徐々に低下した。7月11日に看取り目的で当施設へ入所、入所後は普通食を全量摂取されたものの10日経つ頃には下痢すると訴え食事を全く摂取しなくなった。8月には心不全増悪による胸水貯留が確認され新型コロナにも感染した。施設医師より病院入院での治療をすすめられたが、本人の意志を尊重するという家族の決断により、施設での利尿剤投与及び酸素管理を選択した。施設内での看取りケアをすすめる中、家族は高タンパクジュースやカロリーメイトゼリーなどの差し入れを継続し、施設スタッフも管理栄養士を中心に多職種で栄養管理を強化。9月以降徐々に食思が改善し、12月にはアルブミン3.1まで回復。現在は要支援への更新申請が視野に入るまでに至った。【考察】看取り期の高齢者におけるホメオスタシスの維持が重要であることが示された。特に栄養管理の強化が身体機能の回復に寄与し、アルブミン値が改善する結果となった。施設スタッフが多職種連携のもと段階的な栄養補給を行い、本人の状況に応じた柔軟な対応を行ったことが、身体機能と心理的安定の改善に大きく寄与した。またコロナ禍において家族が支援に積極的に関与できる環境が本人の心理的支えとなり、食事摂取量の回復を促したと考えられる。本人の意思を尊重し施設内で過ごせたことが、心身のホメオスタシス回復において重要な役割を果たしたと考える。【まとめ】高齢者ケアでは、身体・精神・社会的側面の恒常性を保つことが、単なる延命ではなく生活の質や自己決定権の尊重につながるため、ホメオスタシスの維持は不可欠である。サルコペニア予防を含む支援はQOL、施設ケアの質向上に大きく寄与する。内視鏡AI画像診断支援システムの導入新古賀クリニック 臨床工学課 ◎古賀舜己、松本健太、奥園結、田中愛望、宮本脩平、渕上裕斗、古賀新悟、片山啓司郎、内村愛祐奈、秋山福子【背景】FUJIFILM社製の内視鏡AI画像診断支援システム(以下CAD EYE)は、人工知能を活用し内視鏡で撮影した映像を高速で解析する装置である。機能として、病変が疑われる箇所の特定を行う検出支援モード、胃全体をもれなく観察したかを部位ごとにマークするランドマークフォトチェッカー(以下LMPC)、病変が腫瘍性か非腫瘍性かをリアルタイムで鑑別する鑑別支援モードの3つを有している。今回、CAD EYEの機能を使用し、病気の早期発見、診断精度の向上、医師や患者の負担軽減に貢献できたか評価する。【方法】1、検出支援モードで前回所見と比較し、相違なく検出できるか評価する。2、LMPCで全ての部位にマークが付いた症例(コンプリート)の割合を調査する。3、鑑別支援モードでは判定結果と病理結果が一致しているか調査する。4、GISの通常検査とCAD EYEを用いた検査で要した時間を比較する。5、GIS、TCSにおいて検査内容に変化があるか調査する。【結果】1、前回所見と相違なく検出可能であったが、胃内の反射光や泡などに反応し、誤検出も多かった。2、コンプリートした症例は、30症例のうち3症例であった。3、TCSにおいて鑑別— 227 —

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