診療技術部看護部各委員会報告業績編集後記教育講演会・研修会・研究会天神会医療研究会抄録3)地域連携 入退院と在宅支援 Vol.12 No.6効果を得ることができた。また、予期せぬ発症を患った患者に対し質の高い専門性をもつ多職種が連携し医療体制を整えサポートすることは、社会復帰を目標とする患者に対し安全・安心した医療看護を提供することに繋がったのではないかと考える。【参考引用文献】1)予防医療 包括的な協力を目指して 山田悠史2)透析医療における多職種連携 看護師の役割 宮下 美子「最善の医療およびケア」を受けるということ~その人らしく生きる「場」を選ぶために~新古賀病院 地域医療連携室 ◎横溝愛1)、市川智恵1)、松家貴美子1)、大石恵美子2)、久保山美智子3)1)新古賀病院 地域医療連携室、2)古賀病院21 地域医療連携室、3)新古賀リハビリテーション病院みらい 地域医療連携室【はじめに】在院日数短縮が促進される急性期病院において、患者・家族が安心して次の療養場所に移行するために、退院支援の必要性が高まっている1)。患者の価値観や生活などその人の物語を聞き、多職種による話し合いが重要である。しかし、急性期病院では治療が優先される事が多く、患者の生活や大切にしているものを理解する事が厳しくなっている2)。また、近年では、アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)が普及啓発され実践されつつあり、さらに患者・家族の意向を踏まえた人生の最終段階に向けた入退院支援が重要とされている3)。今回、終末期にある心不全患者が早期退院しできる限り自宅で生活したい意思に添い、入院時より介入し訪問診療導入の提案を行った。しかし早期退院に至らず「最善の医療およびケア」とは何かについて、関わりを通し経験したため報告する。【事例】O氏 87歳(女性)独居。病名:心不全(重症大動脈弁閉鎖不全症・重症僧帽弁閉鎖不全症)要支援2、訪問看護:2回/月利用中。X年Y月、定期受診時心不全増悪状態で2週間程度の入院が必要と説明あり、しぶしぶ納得し同日入院。入院4日目 内科的治療では改善が乏しく、再度治療方針の確認あり。本人は「もう何もしないと決めていたのでしません」と10年前から変わらない意思であり、カテーテル治療も含め積極的な治療は行わない方針となった。入院14日目 主治医より継続した点滴加療の説明があり「元々何もしないって言ってきてるし早く帰りたい。」と発言あり、信頼ある訪問看護師へ涙ながらに訴えられる。入院18日目 在宅酸素、訪問診療導入し自宅退院。【考察】O氏は10年前より積極的な治療はしないと意思決定しており、自宅での生活を希望されている事の共有化は出来ていた。しかし「なぜ早期退院したいのか」「なぜ積極的な治療を望まないのか」など踏み込んだ聞き取りが出来ていなかったと考える。その時の患者が何を望んでいるのかを細かく、丁寧に聞き取り多職種で共有化し、意向に添った支援をする必要があったと考える。「急性期病院では治療が優先・治療をする場」だけではなく、しない事も患者にとっては「最善の医療およびケア」だと考える。【まとめ】O氏は、在宅診療へ移行し約1年間再入院なく生活出来ている。「外に出たい」との希望でデイサービスの利用開始、入浴や食事の準備など出来ることは自身で、出来ない事は他者に頼るなどと「自宅に帰れて満足」と笑顔で過ごしている。患者の生活背景や価値観・人生観を尊重し家族を含めてその人らしく生きる「最善の医療およびケア」を支援する関わりが重要と実感した事例であった。【引用文献】1)老年看護学 第18巻2号 2014.3 67P2),4)がん看護 18巻1号(2013 Jan/Feb)— 231 —
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